大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

仙台地方裁判所 昭和46年(わ)253号 判決

本店所在地

仙台市国分町二丁目九番二七号

有限会社松居組

右代表者代表取締役

松居重雄

本籍

東京都品川区上大崎一丁目四四四番地

住居

仙台市国分町二丁目九番二七号

会社役員

松居重雄

昭和五年一月八日生

右被告人等に対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は検察官荒木紀男出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人有限会社松居組を罰金三〇〇万円に

被告人松居重雄を懲役四月に各処する。

但し、被告人松居重雄に対し、この裁判確定の日から二年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人会社は肩書地に本社を設け、とび土工業を営む有限会社で、被告人松居重雄は右会社の代表取締役として、その業務全般を統括しているものであるが、被告人会社の業務に関し、法人税を逸れる目的で、労務費、外注工賃を架空もしくは水増し計上する等の不正な方法により所得を隠匿したうえ、

第一  昭和四三年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度において、被告人会社の実際の所得金額が、二、八一一万二、二三一円であったのにかかわらず翌四四年二月二八日仙台市上杉一丁目一の一所在の所轄仙台北税務署において、同税務署長に対し、右年度の所得金額が六五三万二、三八八円であり、これに対する法人税額は二〇二万六〇〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もつて同会社の右事業年度の正規の法人税額九五七万一、五〇〇円と右申告税額の差額七五五万九〇〇円をほ脱し

第二  昭和四四年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度において、被告人会社の実際の所得金額が、二、一六〇万六、五九二円であったのにかかわらず、翌四五年二月二八日、前記仙台北税務署において、同税務署長に対し、右年度の所得金額が七八二万五、五三七円であり、これに対する法人税額は二三九万六、七〇〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、更に同年六月二二日、前記仙台北税務署において、同税務署長に対し右年度の所得金額が七九八万九、三六〇円であり、これに対する法人税額が二四五万三、九〇〇円である旨の虚偽の修正申告書を提出し、もつて同会社の右事業年度の正規の法人税額七二一万二、七〇〇円と右修正申告税額の差額四七五万八、八〇〇円をほ脱し

たものである。

(証拠の標目)

一、第一回公判調書中の被告人の供述部分

一、被告人の当公判廷(第三回)における供述

一、第二回公判調書中の証拠関係カード記載の請求番号二ないし一〇三

一、押収してある「昭和四三年一月一日 一二月三一日事業年度分の確定申告書綴有限会社松居組」一冊(昭和四六年押第八三号の一)

一、押収してある「昭和四四年一月一日 一二月三一日事業年度分の確定申告書綴有限会社松居組」一冊(同号の二)

一、昭和四四年一月一日 一二月三一日事業年度分の法人税修正確定申告書、有限会社松居組」一冊(同号の三)

(法令の適用)

被告人松居重雄の判示第一および第二の各所為はいずれも法人税法一五九条一項、七四条一項に該当するので、所定刑中いずれも懲役刑を選択し、以上は刑法四五条の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重いと認める判示第一の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人松居重雄を懲役四月に処することとし、なお、同被告人は脱税の方法として従業員に、外注工賃の水増や雑収入の除外、架空労務費の計上などを指示し、正規の税額の六割におよぶ脱税をしていたもので、その責任は重いが、しかし、判示の脱税をするにいたった動機も、単に私利私欲のためというよりは、同被告人の経営する前記会社のためというものであり、脱税が発覚したあとは、むしろ、積極的に本税あるいは重加算税を納め、経理面の改善を図るなどの処置を講じ、また改悛の情も著しいものがあるなどの事情を考慮し、同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から二年間右の刑の執行を猶予することとする。

被告人有限会社松居組については、その代表者である被告人松居重雄が同会社の業務に関し判示第一および第二の違反行為をしたものであるから、いずれも法人税法一六四条一項、一五九条一項、七四条一項に該当し、以上は刑法四五条前段の併合罪なので、同法四八条二項により各罪につき定めた罰金の多額を合算した金額の範囲内で被告人有限会社松居組に対し罰金三〇〇万円に処することとする。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 中川文彦 裁判官 坂井宰 裁判官 平良木登規男)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例